Photographer Chihaya Kaminokawa 神ノ川智早

神ノ川智早

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物語とアルバムのワークショップ

2014Thu09.18

私が写真を始めたきっかけは、「写ルンです」だった。18歳の夏に、友達と2人で鈍行列車に乗って東京から鳥取砂丘へ旅をしたとき、1人1台写ルンですを持って旅の風景やお互いを撮り合った。
あっと思ったらシャッターを押す。目の前の全部を一瞬で自分のものに出来る。その感覚が新鮮で気持ちが良かったことを良く覚えている。

9月13日と14日、京都prinzでの「物語とアルバムのワークショップ」では、その写ルンですを使って大人向けのクラスを開きました。39枚撮りの「写ルンです」は富士フイルム株式会社さまにご提供いただきました。

どんな時に写真が撮りたくなるのか。何を撮りたいのかは、考えても分からない。カメラを手にして毎日をすごしていると、不思議と自分の周りの光が美しく、色はずっと鮮やかに見えてくる。
とにかく撮った写真をプリントして、選んで、並べて一冊の本にしてみる。そうすると、自分だけの物語が現れてくる。写真を続けて来て、私がたどり着いてもうずっと心を奪われているこの行程を、生徒さんたちに数時間という短い時間の中で伝えること。これが今回私がやろうとしたことでした。

1人1台写ルンですを手に、会場の周りを1時間半散策しながら写真を撮りました。そこで私がみんなに出した課題は、ひとつのテーマをもって写真を撮る事。例えば「色」「笑顔」「光」「緑」。どんなものでもいいから、テーマを一つに絞る。そうすることで、その人の捉える「色」がどんなものなのか、「光」がなんであるのかが見えて来て、それが写真の個性になるから。

ネガ39枚という限定された数と、決められた場所と時間の中で、一体どれだけのことを出来るだろうかと正直不安もあったけれど、それはまったくの杞憂でありました。年齢も職業も違う7人の生徒さんが集ったワークショップは、私が思っていたよりもずっと楽しく広がりがあって、深いものでした。
全員が、写真を撮っている最中、出来上がって来た写真を見ている時、アルバムを作っている時もずっと、「楽しい!」「おもしろい!」を口にして、目をきらっきらと輝かせ、お互いにアドバイスしながら作業を進めていました。
それを見て、私は何かを教えなくていいんだなと気付きました。私は場所とヒントを渡して、一歩離れたところから見て時々言葉をかければいい。あとは1人1人が、自分の方向を見つけて進んで行くのだなあと思いました。それを見せてくれた、素晴らしいメンバーに出会うことが出来て幸せな2日間でした。参加してくださったみなさん、本当にありがとうございました。
芸術は、外から勉強して出来上がるものじゃない。人の心の中からむくっと立ち上がってくるものなんだな。そんな事を、1人1人の出来上がったアルバムを見て感じました。
最後になりましたが、改めて、「写ルンです」をご提供いただいた富士フイルム株式会社様に、深く御礼申し上げます。

次のワークショップは、「物語のある写真教室」東京で2014年9月27日&10月26日の2日間、「おかっぱちゃんハウス」で開きます。まだ少しだけ席が残っています。みなさんにお会い出来る事、心から楽しみにしています。詳細とご予約はこちらまで。