Photographer Chihaya Kaminokawa 神ノ川智早

神ノ川智早

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写ルンですその後

2013Fri05.10

写るんですその後。15人分の現像が上がって来た。写真の束を手にする。ゆっくり見たい気持ちと、きちんと写っているか確認したい気持ちで焦りながら次から次へと見ていく。
同じ場所、同じカメラで撮ったものなのに、全員が全く違う物を見ている。そりゃそうだ、当たり前のことだ、と思うけれどそれがしみじみとおもしろい。雨に濡れたポスト。塀からジャンプする男の子。梅の花のアップ。庭師の道具。花壇の土と新芽。制服を着てピースする上級生。暗闇にぼんやり浮かび上がる白い烏骨鶏。
構図が普通に考えるとずれていたり、ちょっと斜めだったり、近づきすぎて被写体がぼけていたりする。子供の目線だからもちろん低くて、物を見上げている。意図してもしきれないアンバランスさと、反射的な勢いに溢れていて、かっこいい写真が沢山あった。あ、これはぜったいに私には撮れないものだ。そう思った。
撮影から2週間後、再び教室で子供達に再会した。授業前にねぇねぇ先生、と、側にいてひっきりなしに話しかけてくる男子の撮った写真には、そういえば全部人が写っていたなと思い出す。
全員にネガと写真を渡すと、わあわあと大騒ぎになった。ネガを見て、これなに?!とざわざわ。こんなの撮れてた!とげらげら笑い、全部使いたい!選べない!と叫ぶ。
今回のワークショップは、写真を撮って、セレクトして、8ページのアルバムを自分で編集するのが目的だった。写真を撮ったあと、それを選んで本にする事で初めて見える世界があるよ。と伝えたかったから。
作業を手伝いながら、子供達がどんな写真を選ぶのかを観察していた。すると、事前に私とアフタースクールのワタナベ先生が見て、これはかっこいいね!と言っていた写真を、殆どすべての子が選んでアルバムに貼り付けている。かっこいい、おもしろい、と感じる視覚的な部分は案外共通しているものなんだと驚いた。
1人1人のアルバムをゆっくり見たかったけれど、あっという間の1時間半でそれも叶わなかった。最後に数人、前に出て来てもらって感想をお願いすると、ぼそっと一言、面白かった。楽しかった。ともじもじしながら発表してくれた。一対一で話していると、良かった、またやりたい!もっとゆっくり作りたい!と饒舌なのに、大勢の前では照れ屋になる子達を、愛おしいな、がんばって!とすっかり先生目線になって見つめてしまった。
極端な話、今回の事を子供達がすっかり忘れても、写真を撮るようにならなくても、ぜんぜん構わない。ただ、目をきらきらさせながら被写体を探し、写真を撮り、アルバムを作ったそれぞれの瞬間が、彼らの中に少しずつ積もって行く、大切なことのひとつになればいいと思う。

最後になりましたが、今回「写るんです」を提供してくださったFUJIFILMさまに、深く御礼申し上げます。自由学園アフタースクールのワタナベ先生、素晴らしい機会を下さってありがとうございました。先生の書いているブログにも、授業の紹介がされています。ブログはこちらから。